外国語専門学校に勤める父は、ずっと学校に詰めていたのですが最近ようやく短時間ですが時折自宅に戻ることが出来ています。でも、我が家はまだまだあの日の衝撃を引きずったまま。
富山は狭いもので、安否がわからない方々が、知り合いの娘さんだったり、友達の友達だったり…。これだけ多くの方が巻き込まれてしまったので、何かしら繋がりがある人がいて、一層心が痛みます。
しばらくは、心静かに祈るより他ない日々です。
こんな時に何が出来るだろう…と考えた末、先日2月26日の横浜での演奏会では、祈りの気持ちを込めてソロで一曲弾かせていただきました。
ショパンの晩年のノクターン、Op.62-2、E-dur。
「憧れ」を示す6度上行の音型から始まるこのノクターンは、柔らかな憧憬でもあり、思い出でもあり、幸福でもあり、淡い哀しみでもあるように思います。中間部の慟哭、それを経た後の全てを達観するような穏やかな再現部、ふっと我に変えるような転調。
大好きなのが、左手の温かく語りかけるような16分音符の連なり。優しく「いろいろあるけれど強くしなやかに人生を歩みなさい」と言ってくれているようで、必ずここで、なんだかふわっと泣きたくなります。素晴らしい曲です。
横浜・上大岡のヤマハさんは、非常にアットホームな空間で、ピアノも優しい音がして、スタッフの皆さんも細やかな心遣いをしてくださり、すごく心地よかったです。
お越しいただいた方々も皆さんとても真剣に耳を傾けてくださいました。
私も、演奏前に地震の事をお話ししたせいか、とても集中して心を込めて弾くことが出来たように思います。
その後、黒川先生との連弾は、本当に楽しかった!
本番中にもいろいろと発見があって、演奏者としては、お、良いねぇ!という瞬間の連続でした。やはり、共演者がいて、その場の空気を瞬間的に作り上げていくのは面白いものです。
2人してニコニコしながら弾いていたかも。黒川先生のお人柄のおかげでもありますね。



お世話になったスタッフの皆さん、譜めくりのYちゃんと。ありがとうございました!
今回の演奏会には、このHPを始めた頃からもう何年も応援してくださっている方や、ライプツィヒで一緒に学んだ友人も聴きに来てくれて、なんだか数年ぶりのプチ同窓会みたいな気分でもありました。
だんだん歳を重ねるごとに、こういう嬉しさが増えていきますね。
人ひとりの歴史は、たかだか30年でも重いものです。
地震のことがあって、テレビのニュースを見る目が変わってきています。
当事者にとっては一生続くような事柄でも、ニュースは次から次へと新しい事に移り変わっていく。そうしないと世の中は動かないのだろうけれど、実際はそこから時間が止まっている人というのは、報道されないだけで、とても多いんだろうなぁ。
痛みを抱えて生きていく人間で成り立つ社会というのが、とても哀しく愛しく、家族の絆や報道のあり方など、今回の地震で普段見えないものが見えているこの頃です。